前回の「自己肯定感について」からも繋がるお話です。

 (まだお読みになっていない方はこちらからどうぞ)

 今回は、褒めることの難しさについてお話ししたいと思います。

 子育て世代の方や、仕事で子どもと関わる方、また、上司と部下など大人の人間関係で悩んでいらっしゃる方にもご参考になれば幸いです。

褒めることは「報酬」の1つ

 「褒める」というのは、評価の1つです。

 つまり、「褒める」という行為は、褒める人が褒められる人に対して「良い」という評価を与えることであり、「報酬」の1つです。

 当たり前のことですが、実は意識して使っている方は少ないかもしれません。

 そして、これが「褒めること」を難しくしている要因の1つです。

褒めることで生まれるギャップ

 「褒めること」は報酬の1つなので、例えばお金を与えることと同じ効果を発揮します。

 例えば、あなたが仕事をした際、「この仕事だったら500円くらい欲しいな」と思っていたとします。

 そこで、上司から500円貰えたら「そうだよな」と思い、1000円貰えたら「やったー!」となるかもしれません。

 また、100円しか貰えなかったら「何でだ?」と怒りがわいてくるかもしれません。

 実は、誰かを褒めるときには、これと同じことが起こっています。

 わかりやすいように、値段を記載します。

 あなたが仕事をした時、「この仕事だったら500円分くらいの褒め方で褒められるだろう」と思う。

 そして、上司から500円分の褒め方をされたら「まあそうだよな」と思い、1000円分の褒め方をされたら「やったー!」と思う。

 また、100円分の褒め方をされたら「何でだ!?」と思う。

 このように何かしらの評価(報酬)を期待していると、与えられるものが「お金」か「褒め」かに関わらず、相手からの評価(報酬)に一喜一憂します。

 お金であれば、100円、500円、1000円などのように、目に見えて価値がわかります。

 しかし、「褒め」はどうでしょう。

 100円分の褒め方、500円分の褒め方、1000円分の褒め方などを明確に定義できないですよね。

 つまり、褒められる側の「これぐらい褒められたい」と、褒める側の「これぐらい褒めたい」の間にギャップが生まれやすいのです。

褒めることの落とし穴

 育児書などでは、「できるだけ褒めましょう」などと書いている本もあったりします。

 もちろん、褒めることも大切です。

 しかし、先述したように「褒めることは報酬である」ということを意識せずに行っていると思わぬ落とし穴にハマってしまうことがあります。

 何度も言うように、「褒めること」は「評価」です。

 つまり、ある行為に対して「褒める」ということは、その行為を「良いこと」と認めることであり、もっというとそれ以外の行為は「悪いこと」と評価することになります。

 これはいささか極端に聞こえるかもしれません。

 しかし、「評価」とはそういうものなのです。

 決して褒める側がそういうつもりはなくても、褒められた側はそう受け取る可能性があります。

褒めることで相手の自己肯定感を低下させる可能性がある

 なんでもかんでも褒めればいいと思っている方は、この「褒めることで生じる落とし穴」によって、気づかないうちに相手の自己肯定感を低下させている恐れがあります。

 前回お伝えしたように、自己肯定感とは「自分でいいんだ」という感覚です。

 そして、それは、「他の人より優れているところがある。そして他の人よりも劣っているところもある。でも自分“で”いいんだ」という感覚です。

 つまり、自己肯定感が育つには「良いところも悪いところもある自分」を認められるかどうかが大切です。

 では、相手を褒め続けた場合はどうなるでしょう。

 それは、「良いところのあなたしか認めない」というメッセージになります。

 そして、それは「悪いところのあなたは認めない」というメッセージとなっていきます。

 つまり、できるだけ相手を褒めるという関わり方は「(私が思う)良いあなたは認めるけど、悪いあなたは認めません」というメッセージを伝えているのと同じことになります。

(たいてい、できるだけ相手を褒めようとしている方は、相手の良いところだけでなく悪いところにも目を光らせています)

 何度も言うように、「褒めること」は評価です。

 したがって、人によっては、ある行為を褒められたときに、「やったー」と素直に受け取らず、「今回は褒められたけど、褒められない時の私はダメなんだ」と受け取ってしまう方がいるということです。

 これでは自己肯定感は育ちませんし、その状態が積み重なると、たくさん褒められているにも関わらず、その方の自己肯定感はどんどん下がっていきます。

 (ちなみに、全く叱らずに何でもかんでも褒め続けた場合、自己肯定感ではなく万能感が育ちます)

無理に褒めようとするとタイミングを逃す

 以上、今回は「褒めることの難しさ」についてお話しました。

 このような難しさがあるために、私は、親子でも上司と部下でも人間関係で悩んでいる方には、絶対に「相手の良いところ見つけて褒めましょう」とはアドバイスしません

 人間関係で悩んでいる方の多くは、どうにかしようと頭で考え過ぎている傾向があります。

 そこに「褒めなくては」となると、さらに考えすぎることになってしまいます。

 本来、人間関係では、頭で考えて付き合うだけでなく、感覚的な対応がとても大切です。

 例えば、子育てにおいて、子どもが何かをした際に「褒めなきゃ」となっていると、その一瞬で子どもが本当に欲しているタイミングとズレてしまいます。

 「こういう時は褒めなきゃ」と頭で考えてから褒めると、適切なタイミングを逃します。

 では、どうすればいいのか。

 「褒めなきゃ」で褒めるのではなく「褒めたい」から褒めるのです。

 それは、「お腹が空いて食べたい」から食べるのと同じです。

 そのためには、あなた自身の感覚が開かれていることが大切です。

当オフィスの整心は感覚を大切にする体験

 当オフィスでは、瞑想と箱庭による体験を通して、心を整えます。

 心が整うことで、自分自身の自然な感覚に気づくことができるようになります。

 そして、その感覚を大切にできたとき、自然と「褒めたいから褒める」ということができるようになります。

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